相続土地国庫帰属制度は空き家付きでは使えない【山口県】壊す前に知る費用と条件
こんなお悩み、ありませんか。
- 相続した実家が空き家のまま。「土地を国に引き取ってもらえる制度がある」と聞いて、使えるのか知りたい
- 使うには家を壊さないといけないのか、壊したらいくら出ていくのか、見当がつかない
- 家を壊したあとで国から「引き取れません」と返事が来たらどうしよう、と不安
一つでも当てはまるなら、この記事はあなたのために書きました。
読み終わるころには、次の3つが分かります。
- 相続土地国庫帰属制度が、空き家が建ったままでは使えない理由
- 壊してから申し込む場合に出ていくお金と、それでも引き取ってもらえない土地の条件
- 家を壊さずに手放す道が、もう一つあること
難しい言葉は使いません。
ゆっくり読んでみてください。

はじめまして。株式会社Glennの、しらかわだいき です。
山口県で、空き家や古くなったアパートを買い取って、壊さずに直して、次に住む人へ貸しています。
相続土地国庫帰属制度は、名前だけを聞くと、家ごと国に引き取ってもらえる制度のように見えます。
僕の祖母の家も、山口県東部の山の方で、2年ほど空き家のままになっています。
家の中の物の処分も気持ちの整理も進まないので、手放す方法を探したくなる気持ちは、本当によく分かります。
だからこそ、制度の名前だけを頼りに家を壊してしまう前に、国と山口県の資料で確かめたことをお伝えします。
この記事でわかること
- 建物がある土地は、相続土地国庫帰属制度の申請ができないこと
- 壊してから申し込む流れと、10年分の負担金の目安
- 更地にしても引き取ってもらえない土地の条件
- 国庫帰属のために壊す前に、確かめてほしい3つのこと
- 建物を壊さずに手放す、もう一つの道
結論:相続土地国庫帰属制度は、空き家が建ったままの土地では使えません

先に答えを書きます。
相続土地国庫帰属制度は、建物が建っている土地では、承認申請そのものができません。
法務省のページでは、引き取ることができない土地の最初に「建物がある土地」が挙げられ、理由がこう書かれています。
建物は、一般に管理コストが土地以上に高額であること、また、老朽化すると、管理に要する費用や労力が更に増加するだけでなく、最終的には建替えや取壊しが必要になるため、承認申請を行うことができません。
出典:相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件|法務省
つまり、空き家を残したまま、土地と一緒に国に引き取ってもらうことはできません。
使うとすれば、先に家を壊して更地にしてから申し込む、という順番になります。
そもそも、どんな制度なのか
相続土地国庫帰属制度は、相続などで受け継いだ土地を手放して、国のものにしてもらうための制度です。
持ち主の分からない土地が増えるのを防ぐために、令和5年(2023年)4月27日に始まりました。
申し込めるのは、相続、または相続人への遺贈(遺言で財産を譲ること)によって土地を受け継いだ方です。
出典:相続土地国庫帰属制度について|法務省/引き取ることができない土地の要件|法務省
空き家を壊して相続土地国庫帰属を申請するまでの流れと、かかるお金
建物を壊してから申し込む場合、流れはおおむね次のとおりです。
- 家の中を片付けて、建物を壊す解体の見積を取り、家のある市や町の補助金を確かめてから契約します
- 更地になった土地で、承認申請をする建物が残っている間は、申し込めません
- 国の審査を受ける申請の段階で「却下」になる土地と、審査の段階で「不承認」になる土地の条件が決まっています
- 承認されたら、負担金を納める国がその土地を管理する費用の10年分をもとに決まるお金です
この流れの中で、前もって知っておいてほしいお金が2つあります。
1つは建物を壊す費用、もう1つは承認されたあとに納める負担金です。
負担金:宅地は原則20万円、ただし市街地では面積で増えます
負担金は、国有地の種類ごとに、その管理にかかる10年分の標準的な費用をもとに決まります。
山口県の空き家ガイドブックには、負担金の具体例が表で載っています。
| 土地の種類 | 負担金の目安 |
|---|---|
| 宅地 | 面積にかかわらず20万円。ただし市街化区域・用途地域が指定されている地域の宅地は面積に応じて計算(100㎡で約55万円、200㎡で約80万円) |
| 田・畑 | 面積にかかわらず20万円。ただし市街化区域・用途地域が指定されている地域や農用地区域などの田・畑は面積に応じて計算(500㎡で約72万円、1,000㎡で約110万円) |
| 森林 | 面積に応じて計算(1,500㎡で約27万円、3,000㎡で約30万円) |
| その他(雑種地・原野など) | 面積にかかわらず20万円 |
出典:空き家ガイドブック~相続から管理・利活用まで~「負担金算定の具体例」|山口県
「原則20万円」だけを覚えていると、市街化区域や用途地域(都市計画で、建ててよい建物の種類などを決めている地域)にある宅地では、金額を読み違えます。
面積に単純に比例するわけではなく、広くなるほど1㎡あたりの金額は下がる仕組みです。
ご自分の土地がどの種類にあたるか、市街化区域や用途地域に入っているかは、申し込む前に相談先で確かめてください。
解体費:国や県が示す相場はありません
建物を壊す費用について、国や県が公式に示している相場はありません。
国土交通省の空き家対策の特設サイトにも、山口県の空き家ガイドブックにも、金額の目安は載っていません。
建物の造りや広さ、重機が入れるかどうか、石綿(アスベスト)があるかどうかで、金額は大きく変わります。
金額を知るには、解体会社から内訳の書かれた見積をもらって比べるしかありません。
見積のどこを見ればいいかは、空き家の解体費用の記事にまとめています。
更地にしても、相続土地国庫帰属で引き取ってもらえない土地があります
建物を壊せば、それで引き取ってもらえるわけではありません。
法務省は、申請の段階で却下される土地と、審査の段階で承認されない土地を、それぞれ挙げています。
| 段階 | 引き取ってもらえない土地 |
|---|---|
| 申請の段階で却下 | 建物がある土地 |
| 担保権(抵当権など)や、使用収益権(土地を借りて使う権利など)が設定されている土地 | |
| 他人の利用が予定されている土地 | |
| 特定有害物質で土壌が汚染されている土地 | |
| 境界が明らかでない土地、持ち主や範囲について争いがある土地 | |
| 審査の段階で不承認 | 一定の勾配・高さの崖があり、管理に大きな費用や手間がかかる土地 |
| 管理や処分のじゃまになる物が、地上にある土地 | |
| 取り除く必要がある物が、地下にある土地 | |
| 隣の土地の持ち主などと裁判をしないと、管理や処分ができない土地 | |
| その他、通常の管理や処分に大きな費用や手間がかかる土地 |
出典:相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件|法務省
相続した土地でまず確かめておきたいのは、隣の土地との境目がはっきりしているかどうかです。
境目がはっきりしない土地は、申請の段階で却下されます。
また、建物を壊したあとに、じゃまになる物が地上や地下に残っていると、審査で承認されないことがあります。
建物付きの空き家でこの制度を考えるときにいちばん重いのは、壊すのは取り消せないのに、引き取ってもらえるかどうかは壊したあとの審査で決まるという順番です。
ご自分の土地が条件にあたるかどうかは、壊す前に専門の窓口で確かめてください。
山口県の空き家相談窓口のページには、山口地方法務局や山口県司法書士会、山口県土地家屋調査士会などの専門窓口がまとめて載っています。
国庫帰属のために空き家を壊す前に、確かめてほしい3つのこと

解体は、あとから取り消せません。
壊す契約をする前に、次の3つだけは確かめてください。
① 家のある市や町に、解体の補助金があるか
山口県内では、19市町のうち17市町に空き家の解体を補助する制度があり、和木町と上関町にはありません(令和8年度時点)。
金額や条件、受付の期間は市や町ごとに違い、予算に達すると期間の途中でも締め切られます。
参照:市町の空き家対策関連情報について|山口県/和木町(令和8年4月現在)|山口県/上関町(令和8年4月現在)|山口県
市や町ごとの中身は、山口県の空き家の解体補助金の記事にまとめています。
② 更地にしたあとの固定資産税
人が住む家が建っている土地は、固定資産税の課税標準(税金を計算するもとになる額)が軽くなる特例を受けています。
家を壊して更地にすると、住宅が建っている土地ではなくなるので、この特例の対象から外れます。
参照:地方税法(抄)住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例|国土交通省/固定資産税の概要|総務省
そして、審査の結果が出るまでの間も、土地の持ち主はあなたのままです。
壊したあとの税金がどう変わるかは、更地にしたときの固定資産税の記事に書きました。
③ 建物ごと引き取ってくれる相手がいないか
この制度は、「建物を壊してから、土地だけを国に引き取ってもらう」仕組みです。
逆に、建物ごと引き取る相手が見つかれば、壊す必要も、負担金を納める必要もありません。
壊すと決める前に、建物を残したままの道と並べて比べてみてください。
| 道 | 建物 | 出ていくお金 | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 相続土地国庫帰属制度 | 壊して更地にしてから申し込む | 解体費と、承認後の負担金(宅地は原則20万円、市街地の宅地は面積で増える) | 却下・不承認の条件にあたると、引き取ってもらえない |
| そのまま持ち続ける | 残る | 毎年の税金、草の手入れ、雨漏りや動物の住み着きへの対処 | 空き家の期間が長いほど、手入れは年々大変になる |
| 建物ごと引き取ってもらう(僕たちの場合) | 壊さない。家の中の物もそのままでよい | 解体費も片付け費も出さずに済む形 | 引き取れない家もある。契約は売買契約で、不動産会社に間に入ってもらい、名義変更は司法書士に頼む |
壊す・売る・貸す・引き取ってもらうの4つを並べたページは、空き家をどうするか迷ったときの全体ページです。
国庫帰属では手放せない空き家でも、僕たちが引き取れる家・引き取れない家
相続土地国庫帰属制度は建物があると申し込めませんが、僕たちは建物が残ったままの家を見に行きます。
ただ、どんな家でも引き取れるわけではないので、条件を正直に並べます。
僕たち自身が買い取って、自分たちで直して、貸します。
転売はしません。だから、引き取れる家には条件があります。
| 家の状態 | 理由 | |
|---|---|---|
| ○ | 山口県内の戸建て・小さなアパート | 自分たちで見に行けて、直して、管理できる範囲だからです |
| ○ | 家の中に荷物が残ったままの家 | 片付けは僕たちがやります。仏壇や思い出の品は、先にご相談します |
| ○ | 古い家・傷んでいる家 | 直す前提で見ます。柱と屋根が残っていれば、可能性があります |
| ○ | 遠方にお住まいで、家を見に来られない方 | 写真とお電話で進められます。ご来県は必要ありません |
| ○ | 不動産会社に「売れません」と言われた家 | 貸す前提なら、値段の付け方が変わります |
| × | 柱が折れている・大きく傾いている家 | 直す費用が家賃で回収できません。壊すしかない家は、正直にそうお伝えします |
| × | 車が入れない・道に接していない家で、大きな工事が要るもの | 工事の車が入れないと直せません。小さな工事で済むかは見てから判断します |
| × | 土地が他の人のもので、建物だけが自分のもの、という家 | 地主さんとの話し合いが要るため、今はお受けしていません |
| × | 山口県外の家 | 見に行けない家は、責任を持てません |
「買い取り」という言葉を使いましたが、高く買うことはできません。
僕たちが出せるのは、解体費も片付け費も出さずに済むという形です。
それでも「持ち続けるよりいい」と思っていただけたときだけ、進めます。
ご自分の家が引き取れる家かどうか、分からなくて当たり前です。
LINEで、家の写真を1枚送っていただくだけで大丈夫です。
見に行けそうかどうか、僕が正直にお返事します。無理に決めていただくことはしません。
僕が、空き家を壊さずに直して貸している理由

写真は、僕の祖母の家です。
いずれ譲り受けて、貸すか宿にしたいと考えています。
そうすれば次の思い出が生まれ、思い出の場所が廃れていくこともないからです。
それでも、気持ちの整理と家の中の物の処分で、なかなか前に進めていません。
ただ、空き家はそのままにしておくと、草が伸び、雨漏りや動物の住み着きで直すお金がかかり、傷んでいく一方です。
家が崩れて周りに被害を出せば、持ち主が責任を問われることもあります(民法第717条)。
かといって、国に引き取ってもらうために壊せば、その家が誰かの暮らしの場所になることは二度とありません。
柳井市のある家は、錆びて折れそうだった2階バルコニーの手すりを補強し、ボロボロだった畳をいくつか替え、汚れていた洗面台を交換し、台所は磨いただけで、次の方に住んでいただけました。
全部を新品にしなくても、危ないところと汚れたところを直せば、家はもう一度使えます。
親御さんが暮らした家が壊されずに、次の家族の暮らしの場所になる流れを、僕は「思い出のバトン」と呼んでいます。
空き家の期間は1日でも短い方がいい、と僕は考えています。
重い思いはあると思いますが、壊す前に一度だけ、次の人にバトンを渡せないか一緒に考えさせてください。
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国庫帰属のために解体の見積を取る前に、一度だけ家の写真を見せてください。
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その空き家、壊す前に一度だけ、写真を見せてもらえませんか。
僕はもともと、山口県で中学校の体育の先生をしていました。誠実に対応することは、そのころから心がけています。
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正直にお返事します
- 僕たち自身が引き取り、自分たちで直して使います。転売が目的ではありません。
- 家の中の荷物は、そのままで大丈夫です。片付けは僕たちがやります。
- 引き取れないときは、その理由も正直にお伝えします。
- 無理に決めていただくことはしません。「写真を見せるだけ」でも大丈夫です。
相談は無料です。送っていただいた写真やご相談の内容を、ご本人の許可なく公開することはありません。
山口県内であれば対応します。岩国市・柳井市・周南市のあたりは、すぐに見に行けます。
空き家をどうするか迷ったときの全体ページ(壊す・貸す・手放すの選び方) / 空き家の相談室(記事一覧)
この記事の参考資料
- 相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件|法務省
- 相続土地国庫帰属制度について|法務省
- 相続土地国庫帰属制度の負担金|法務省
- 空き家ガイドブック~相続から管理・利活用まで~(令和7年3月一部改定)|山口県
- 空き家対策 特設サイト|国土交通省
- 空き家相談窓口のご案内|山口県
- 市町の空き家対策関連情報について|山口県
- 市町の情報 令和8年4月現在 和木町|山口県
- 市町の情報 令和8年4月現在 上関町|山口県
- 地方税法(抄)住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例|国土交通省
- 固定資産税の概要(土地に係る負担調整措置)|総務省
しらかわ だいき株式会社Glenn 代表/山口県で空き家と古いアパートを買い取り、壊さずに直して貸しています2026年9月の時点で15戸を持ち、14戸に入居していただいています。古い戸建てを3軒、自分たちで直して貸してきました。
妻と息子と、山口県で暮らしています。家賃で家族を養っているので、引き取れる家と引き取れない家を、正直にお伝えします。
